第十九回 / ある日、娘が私に言いました。「バイクに乗りたいんだけど。」
ある日、娘が私に言いました。
「バイクに乗りたいんだけど。」
とうとう来ました。そうです。チャンス到来です。娘とツーリングに行けるかもしれない、チャンス到来です。
娘も年頃になってくると、ほとんど一緒に出かけることはありません。昔はよく一緒に遊んだもんですが、最近は全くです。きっと、どこのお父さんも同じでしょうね。もし、出かけたとしても買い物です。服を買わされるくらいです。まさにATMマシーンとなります。そんな娘がバイクに乗りたいと言ってきたのです。
詳しく話を聞くと原付バイクを友達が乗っているので私も乗りたいとのことでした。
そこで私は閃きました。バイクに乗りたいなら、交通ルールを勉強しないとダメ。教習所で勉強しなさい。教習所で中型のバイク免許を取得したら、原付バイクに乗ってもいいと話をしました。みなさんもご存じの通り、当然原付バイクで長距離ツーリングに行けません。学生時代は、隣の県くらいまでは行きましたが、私の年齢ではもう無理です。お尻が大変なことになってしまいます。原付に乗ったとしても、免許さえ取らせておけば、大きなバイクに乗りたいといいだすかもしれません。いつになるかわかりませんが、一緒にツーリングにいけるかもしれません。私は、原付バイクを餌に中型免許を取得させることを思いついたのです。
娘が教習所に通い始めて数日後。
娘が教習所から帰ってきました。そして娘が私の顔を見ると、急に泣き出したのです。こんなことは、今までありません。私は非常にびっくりしました。何かあったのでしょうか。娘が落ち着くのを待って話を聞いてみると、コケまくったというのです。そして、最後は心が折れて教習中に座り込んでしまったと言うのです。どうやら、怖くなったみたいなのです。
これは、大変です。娘がバイクを嫌いになるかもしれない瞬間です。油断していました。私が免許を取った時と同じ様に誰でもすぐに慣れると考えていました。しかし、どうやら違うようです。バイクが勝手に動くというのです。
私は娘に話しかけました。
「最初は、みんなコケまくる。それに教習所のバイクはこかしても大丈夫。気にしなくていい。」
娘は少しずつ落ち着いてきたようです。
教習代は、もう支払済みです。辞めると言い出したら、どうしましょう。
私は翌日、娘を外に連れ出しました。バイクの後ろに乗せて、連れ出しました。もちろん娘を後ろに乗せるのは初めてです。ゆっくり走りだします。クラッチの意味やスピードを経験させました。娘の様子を伺うと、楽しそうにしています。まだ、嫌いにはなってないようです。どうやら、まだ教習所に通うようです。
さて、何回補修を受けるのでしょうか。その度に教習代を請求されるのでしょうか。娘が免許を取るのは楽しみなのですが、私の懐が心配になってきました。娘が免許を取得できれば、皆さんに報告します。 大丈夫やろか。
今は、スラロームが難しい、と言うまでに成長しました。